その他

2010年 5月26日(水)
新宿 紀伊国屋書店サザンシアターにて
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Music Jacket Gallery 2010 Presents
松任谷正隆氏 VS 信藤三雄氏
「公開CDジャケット・デザイン会議」
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というスペシャルトークイベントに行って来ました。
音楽プロデューサーでありユーミンの夫でもある松任谷正隆氏と
これまでユーミンのアルバム・デザインを手がけてきた信藤氏が、
ステージ上でユーミンの次作アルバムの
ビジュアル・ミーティングを行うというもの。
美術大学に通う学生とデザインの専門学校に通う学生も参加して
信藤氏と対決!?
まず、これまでお二人が手がけてきたユーミンの
アルバム・ジャケット作品を見ながら、
その当時、表現したかった事や苦労した思い出などを紹介。
そしていよいよユーミンの次作アルバムの
ビジュアル・イメージ会議が開始!!
音楽プロデューサーである松任谷氏曰く
「今回のイメージなんですが、“宇宙”それも“ノスタルジックな宇宙”で、
映画『未来世紀ブラジル』で見られるようなCGではない
アナログなポップな世界なのですよ。
また、ポップなものに仕上げるんだけどポップではない!? 
そう、逆さまの発想!!
さっき思いついたんだけど“ポップレス”という
言葉の響きが気に入っています」

それを受けて信藤氏は「う~ん…」

ここで、ユーミンからのメッセージVTRが紹介され
「今回のアルバムに入る2曲ですが、イメージは“人の笑顔”、
人の笑顔というのは合わせ鏡のようなもので
笑顔を見ているとこっちまで幸せな気持になるじゃないですか!?
赤ちゃんがお母さんの顔の表情を見つめるように…、
そんな気持で作りました」

そして実際にこの2曲を聴いてみました。
何とも温かく優しい楽曲です!!

信藤氏は「タイムレス」という言葉が浮かんで来たそうです。

更に、松任谷氏が
「この曲を聴いた時に僕が想像したのは
ラスベガスで行われている“ズーマニティ”というショウで、
最後に会場にいた老夫婦が指名されてステージにあげられるんだけど、
その2人が急に踊り出すのね、
その踊りの素晴らしさに会場のお客さんは感動するんですよ!!
勿論その2人はサクラでプロのダンサーなんだけど、
会場の人はみんなこう思うと思うの“あんなふうに歳をとりたい”って。
そう、若い人の願望…、ある意味傍観者でもある、
そんな事を考えながらディレクションしたんですよ」

ステージ上の信藤氏と学生達がラフ・スケッチの制作にとりかかると、
その間、松任谷氏と会場のお客さんとの質疑応答の
時間となったのですが、 お客さんからは、
今話題の音楽配信についての質問が飛び交いました。

DOWNLOADについて…
音のクォリティについて…
パッケージ・デザインについて…

松任谷氏は自身が音楽を聴く際はDOWNLOADしているとの事で、
特に媒体の形態(種類)についての
こだわりを持っていないようでした。
その辺は、正に自由な発想というか
「もし、今後DOWNLOADで配信する際には何らかの
面白みを付加したいと考えています。
ブックレットとか…、そうなってくると動画もあり!?なのかな」
とも話していました。
しかしながら、さすがに音楽プロデューサーとしての
音のクォリティへのこだわりは強く、
音楽配信の歴史の中でLPと呼ばれるアナログレコードから
CDと呼ばれるコンパクト・ディスク(44.1kHz)が
主流になった時の音の劣化に愕然とした事、
新たな媒体としてのスーパーオーディオCDやブルーレイ・ディスク、
マスタリングについての専門的な内容にまで波及し、
その考えには共感するところが多々ありました。

そうこうしているうちにステージ上で描いていた学生と信藤氏の
ラフ・スケッチが完成しました。

学生の1人は
宇宙を連想する街へ向かう親子の姿を描いたスケッチ
(=“ノスタルジックなアナログの宇宙”から連想した世界)と、
おにぎりを握る若い女性の手のアップ
(=子育てをしていなさそうな!! 母の愛情)を描いたそうです。

もう1人の学生は
横たわる女性の髪の毛から線路が伸びている
ポップを意識したスケッチで、
どちらも松任谷氏とユーミンのコメントと曲のイメージを
加味した内容になっていました。
日頃、デザインを勉強しているとはいえ、
即興でイメージを具現化する力は素晴らしかったです。

そしていよいよ信藤氏のスケッチが披露されました。

それは、女性が両手で砂を持って差し出していて、
その指の間から砂がこぼれおちているというもの。
「手のひらの上に砂の街があるの、
で、こぼれ落ちた砂がグラデーションになって星になっていたり…」と
信藤氏が説明すると、
松任谷氏が間髪入れずに「ハンナプトラだ!!」
「いや、砂っていうのは海を連想させるじゃない、
海っていうのは悠久とか、
タイムレスに漂っているというイメージなんだよね」と信藤氏。

女性がその街を眺めている姿は
正に傍観者でありながら優しさにも溢れた感じがしました。

松任谷氏も「いいじゃないですか、何かすごくいい、
街が滅びるとかそういうイメージだったら違うけど、
何かいい方向性が見えてきました」

これまでもユーミンの作品を手がけてきた
お二人の創作現場を垣間見る事ができ、
また松任谷氏のウィットに富んだ会話も面白く、
非常に有意義なイベントでした。

“ユーミンのCD”と言うと壮大な話になりますが、
東放学園音響専門学校でもCDを制作したり
ジャケットのデザインを行う授業があるので、
この日のイベントで得た発想方法(イマジネーション)を
活かせると思います!!

このイベントを観覧しプロジェクトの過程を知ってしまったので、
この先どんなジャケットになるのか?
どんな曲がインクルードされるのか?
興味が湧いてきました。

ユーミンのアルバムの完成がとても待ち遠しいです。

※2010年 5月30日(10:00~20:00、最終日は19:00)まで
『ジャケットだらけのアート展』
新宿高島屋1階JR口特設会場にて
これまでの信藤氏の作品を観覧する事ができます。
入場無料。
HP: www.epa.mjg.com

~「ではまた次の会議で」という言葉で幕が降りたのでした~

(KCO)